MA(マーケティングオートメーション)という言葉が巷にあふれる昨今、なんとなくわかった気になってしまっているこの言葉。本当に理解し、取り組んでいる企業は意外と少ないのが現状です。そこで 、
をストーリー仕立てでまとめてみました。
創作した事例ですが実際に私が経験した内容をベースにわかりやすく、まとめております。
MA(マーケティングオートメーション)をこれから導入しようとご検討中の企業のご責任者様、ご担当者様、MA(マーケティングオートメーション)は既に導入しているが十分な成果があげられていないと感じている企業のご責任者様、ご担当者様向けの内容となっていますので、是非ご一読ください。
会議にて...
「このような形でわが社のシェアはこの2,3年ABC社に奪われている状況です」
経営会議に席上、営業本部の吉田常務がチャートを示しながら、当社の経営状況を苦しげに説明した。
「営業本部としましては、今後ABC社から奪われた顧客を奪還すべく、まずは第一に営業の顧客訪問を強化します。第二に当社保有の企業情報3万社へMAツールを利用してのメール配信やウェビナーを積極的に行う事で、新規開拓にも一層力をいれ……」
俺はイラっとした。
こいつ昨年と同じことをいってやがる。
俺は吉田の発言を遮り、
「吉田常務。あなたは昨年度も同じ事をいっていましたよ ! それでも当社のシェアが落ち続けている。営業部隊での訪問強化とMAツールを利用したメール配信やウェビナーに頼るマーケティング手法ではこの難局を乗り越えられない! 1週間後にこの難局を乗り越えられる具体的なプランを私にもってきなさい!」
そして1週間後。
吉田は見慣れない男を携えて、俺がいる社長室にやってきた。
吉田はその男を俺に紹介した。
「この度ABC社からヘッドハンティングした川村です。ABC社ではマーケティング部に所属し、主にMAを担当していました。当社でもMAツールの運用を担当してもらいます。」
吉田に紹介された川村という男は歳の頃30代半ば。
こんな若造に何ができるというのだ?
しかもMAなんて3年ほど前に導入しているじゃないか。
今更こんな男をいれて、吉田はどうしようというのだ?
そんな俺の怪訝そうな表情を吉田は完全に無視して、
「では、今後の具体的なプランに関して川村から説明させます」
と川村に説明を促した。
水を向けられた川村は、PC画面を社長室備え付けのスクリーンに映した。
スクリーンには大きく
『MA(マーケティングオートメーション)』とは?
と映し出される。
川村は俺に
「社長、MA(マーケティングオートメーション)とは何か、ご存じでしょうか?」
と聞いてきた。
なんだと? 俺をバカにしているのか?
俺はすかさず
「販促活動の自動化だろ。当社でも3年前に導入してメルマガの配信などで使っているは ずだが。」
と答えた。
川村は
「はい、MAには色々な定義があり、社長の定義も間違いではありません。しかし私はMAを『非対面で顧客の創造、維持する活動を仕組み化する事』と定義しています。この定義 の中で重要なキーワードは3つです。 それは『非対面』、『顧客の創造・維持』、『仕組み化』です。 それでは次からこの3つのキーワードに関して説明していきます。」
川村はそういうと、画面を切り替え『非対面』という文字をスクリーンに映し出した。
「社長、『非対面』の反対は何でしょうか?」
俺の馬鹿にしているのか?
「そりゃ、『対面』だろう」
俺は、憮然として答えた。
「それでは、『対面』で代表的な販促活動は何ですか?」
と更に、川村は俺に尋ねる。
「そりゃ、営業活動だ」
俺は即答した。
「はい、その通りです。『対面』での代表的な販促活動はなんといっても営業活動ですね。しかしながら昨今、この営業活動に変化が求められています。それはインターネットの発達により顧客の『購買プロセス』が変化したことが起因しています。」
「顧客が何らかの製品やサービスの購入を検討し始めた時、まずインターネットで調べます。セールスマンに声をかける時には、すでに導入を決めているか、購買候補を2~3社に 絞っているというのが現状です。つまりセールスマンに声がかかる時には、顧客の『購買プ ロセス』のほとんどが済んでいるのです。我々からすると我々に声がかかった時には、ほぼ 勝負が決まっているともいえます」
俺は今まで続けてきた当社の過ちに気づいた。
常務の吉田がこの2,3年、バカの一つ覚えのように唱えている「顧客訪問」の強化では、何も解決しない。川村がいう通り顧客の『購買プロセス』の早い段階で営業を仕掛けないといけないのだ。
俺は川村の隣の吉田をにらみつけた。
吉田は下を向いて俺に目を合わさないようにしている。
次に川村は『顧客の創造、維持』とスクリーンに映し出した。
「次は『顧客の創造、維持』についてです。いくらメール配信しても、配信したメールを きっかけに問い合わせや検討に進む企業は1%もありません。ほとんどの企業は将来検討する可能性はあるが、“今”ではないのです。 したがって我々は『長期的な視点にたって、顧客を創造、維持』していく必要があるのです。 逆に顧客の立場からすると、『“今” “必要な情報”を“自身の方法”で収集したい』のです。従いまして、顧客の“不要な情報”をメールで配信するのは、結局の所、メール配信の停 止依頼が山のようにくるだけの自殺行為と言わざるをえません。今、当社がしなければならないこと。それは『顧客に必要な情報収集・比較検討しやすい環境を整えること』なのです。」
俺は川村の言葉にすっかり感心させられた。
もし2,3年前にこの川村が当社に入社していたら、ここまでABC社に追いつめられる事はなかっただろうに。
さらに川村はディスプレーの表示を切り替え『仕組み化』という文字を浮かび上がらせた。
川村が話を始める。
「先ほど申し上げた通り、現在当社に求められていることは『顧客に情報収集・比較検討 しやすい環境』を整えることです。そのためにはまず『検討プロセスに応じたコンテンツ』 を準備していくことが必要なのです。そして、コンテンツを充実させたうえで、我々のサイ トに訪問したたり、ウェビナーを視聴してくれた見込み顧客(リード)に対し“次”に案内すべき適切なコンテンツを自動的におくる『仕組み化』が必要になるのです。 この『仕組み化』を実現するツールがMAツールと言われるものです。次のチャートでは MAツールが具体的に、何ができるのかを詳しく述べていきます。」
この段階で俺はすっかり川村のプレゼンに魅了されていた。
「まずMAツールを導入して実現できることが顧客のリード管理です。リード管理とは将来のリード(見込み顧客)の(氏名やメールアドレス等の)基本情報、(Webサイト上等の)オンライン行動履歴、(展示会出席等の)オフライン行動履歴、といったデータを全て統合しデータベース化する機能です。このリード管理データベースがこの後述べる「リードジェネレーション」「リードナーチャリング」「リードクオリフィケーション」の全ての基盤となります」
「リードジェネレーション機能とは、リードを大量に獲得するための機能です。具体的にはリードナーチャリング(見込み顧客育成)につながるように「個人情報(氏名、メールア ドレス、電話番号等)」を獲得するための機能と言えます。大きく分けると当社を認知して いないリードに認知してもらう機能と、一度でも当社と接点をもったことのあるリードに再 アプローチし個人情報を開示してもらうための機能があります」
「リードナーチャリング機能とは取得した「個人情報」と「オンライン行動履歴」「オフライン行動履歴」を確認しながら、適切なメール・電話でアプローチすることでより効果的に購買意欲を高めることを言います。昨今ではリードナーチャリングの用途としてGoogleやFacebookが「メールアドレスを特定した広告配信( カスタムオーディエンス広告)」等も利用されるようになりました」
「リードクオリフィケーション機能とは大量のリードの中から、効率的に成約確度の高いリードを選び出す機能です。獲得した全てのリードに、全力でセールス活動をすることは、企業にとってもリードにとっても望ましいものではありません。そこで全てのリードの「基本情報」「オンライン行動履歴」「オフライン行動履歴」から、そのリードの購買意欲を数値化(スコアリング)し、優先的にセールス活動を行うための機能です」
「オートメーション機能とは『特定の行動をとったリードに、自動でメール配信する』『スコアが〇点以上になったら、SFA(セールスフォースオートメーション)連携でリード情報を自動的に転送する』といった、マーケティング担当者がリード一人ひとりに合わせて行うべき施策を効率化するものです。ステップメールと言われるリードのとった行動に合わせて、ストーリーを立て(これをシナリオと言います)メール配信を自動的に行うという機能も代表的です」
ここまで川村の話を聞いて俺は吉田に尋ねた。
「当社のMAツールは今、川村が教えてくれた機能のどこまでをカバーできているのだ?」
吉田はここでも苦渋の表情を浮かべながら俺にいってきた。
「社長、残念ながら、今当社できているのはリード管理機能の一部と一斉メール配信までです。当社がMAツールを導入した3年前は、川村が紹介したような機能が付いたMAツールはまだ高価で、設定も複雑。とても当社では使えこなせないと、判断いたしました」
MAツールをいれてもそれじゃ、ダメじゃないか。
さっき川村は、顧客は今”“必要な情報”を“自身の方法”で収集したい、のだと言っていた。それなのに一斉メールをするだけでは顧客に“不要な情報”と受け取られる。当社のMAツールが効果を発揮できないわけだ。
俺の心の内を察したように、川村はいよいよ本題という感じで姿勢を正した。
「今、吉田常務がおっしゃった通り、現在当社に導入済みのMAツールでは現在の顧客動向に則ったものとは言えません。そこで私は新たなMAツールの導入を提案しようと思います。一口にMAツールといっても国内シェアTop5を争う、Pardot(パードット), BowNow(バウナウ),Market(マルケト),ListFinder(リストファインダー),HubSpot(ハブスポット)や最近シェアを伸ばしている国産のb→dash(ビーダッシュ),Liny(リニー), MOTENASU(モテナス)等様々です。各社それぞれ特徴がありますので、当社に顧客の『購買プロセス』にあったMAツールを選定しなければなりません。当社の顧客は『購買プロセス』が長く、セリングには必ず対面営業が必要なため、スコアリング機能が充実したMAツールが最適であると考えられます。」
早期にMAツールの導入しなければ、当社は今この瞬間にもABC社からシェアを奪われているのだ。俺は川村に命じた。
「お前が一番当社にあうと思うMAツールの価格を調べ、稟議を上げろ! 一刻も早くだ!」
川村は大きくうなずいた後、俺にこういった。
「MAツールの選定はお任せください。すでに選定は進んでおり、正式見積もりも入手済みです。」
こいつ、中々できるな。
もうすでにMAツールの選定まで終わっているのか、と俺が感心しているところで川村は続けてこういった。
「しかし、MAツールの導入の前に検討すべきことがあるのです。そこに社長も深くかかわっていただきたいと思っております。」
「俺ができることであればなんでも言ってくれ」
川村は俺に
「それは当社がABC社をはじめとする競合と戦い、勝つための“戦術設計”の策定です。ビジネスゴールから逆算して、顧客に対してどのようなプロセスが必要なのか、そのためにどのようなコンテンツが必要なのかを洗い出し、設計していく必要があります。トップ営業マン達がもっているこれまで成功パターンをモデル化し、マーケティング部でコンテンツの充実を図る、これが第一段階です。
そして、第二段階として設計されたプロセスと作成されたコンテンツをMAツールにはめ込んでいくのです。そのためには営業部、マーケティング部合同の少数精鋭のチームが必要なのです。」
そして、川村が改めて俺に向き直りこういった。
「そのチームの旗振り役を是非社長にやっていただきたいのです。新しい試みはとかく社内から反対されるものですが、社長が旗を振っていただければ、社員の意識改革にもつながります」
川村の話に俺は大きくうなずいてみせた。
私の様子をみてさらに川村が続けた。
「もう一つお願いがあります」
「MAツールを導入するにあたり、先ほど申し上げた“戦術設計”以降、リードナーチャリング、リードクオリフィケーション実施のための“業務の明確化”、設計した実行プロセスをMAツールの管理画面から初期設定を行う“設定”、MAツールが動作するようタグの設置やデータ連携・移行を実施する“実装”、データクリーニング、ワークフローやスコアの追加設定等の“ツール運用”、リードナーチャリングの具体施策(シナリオ)への落とし込み、実行推進、効果検証まで推進する“運営”があります。しかしながらこれを全て私一人でやりきることは不可能です。MAツール導入・運用支援サービスを専門に行っている企業がありますので是非そちらからの支援をいただきたいと思っています」
「当然だ! すぐにその会社と面談をしたいので、スケジュールを調整するように」
川村は
「はい!!」
と大きく返事をした。
「今度こそMAツールの導入を成功させてABC社に奪われたシェアを奪い返してやる!」
俺は固く決心したのだった。
いかがでしたでしょうか?
架空の話ではありますが、全て私が一度はMAツールを導入するにあたり、ぶつかってきた事ばかりです。
この記事を読んでいただき、もっとMAの事、MAツールの事が知りたいと思われた方は我々Marketing Academiaにご相談ください。
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