「貴社のお取引先から、調達基準書の中に "サステナビリティ項目" が含まれていた、という経験はありませんか?」
近年、私たちマーケティングアカデミアがクライアントとお話しする中で、この種の質問に「あります」とお答えになる方が、明らかに増えています。
業界別の温度感には差がありますが、製造業・建設業・自動車・電機・化学などの業界では、Tier 1(一次サプライヤー)が顧客から CO2 排出量データの提出を求められ、それが Tier 2、Tier 3 にも降りていく — というサプライチェーン全体での脱炭素要請が、すでに現実のものになっています。
この流れは、これまで「環境とは関係ない」と思われていた マーケティング領域 にも波及しつつあります。本記事では、欧州(規制 + 業界プレッジ)、日本 B2B(製造・建設業の調達基準)、それぞれの最新動向を、できる限り一次ソースで整理します。
検証ステータス凡例: 🟢 一次確認済 / 🟡 二次経由 / 🔴 一次未検証 / ⚪ 弊社見解・試算
正式名称は "Directive (EU) 2024/825 of the European Parliament and of the Council on Empowering Consumers for the Green Transition"(消費者をグリーン移行に向けて力づける指令)。通称 ECGT 指令です。
ECGT 指令は、消費者保護の文脈で議論されてきましたが、影響範囲は広告・マーケティング全般に及びます。
EU 域外の企業であっても、EU 内で販売する以上は適用対象です。日本企業も、EU 向け輸出を行っている部門・関連会社は対応が必要になります。
EU の規制は、過去にも GDPR(2018 年施行)、CSRD(2024-2026 段階施行)といった形で 日本企業の運用にじわじわ影響 してきました。ECGT も同じ経路をたどる可能性が高い、と弊社は見ています(⚪)。
特に、
これらに該当する企業では、社内の購買・マーケ部門で「グリーン訴求の根拠管理」「Scope3 排出量の取引先データ収集」が、すでに実務として始まっている状況です。
世界広告主連盟(World Federation of Advertisers, WFA)が、2021 年 4 月 21 日に発表した Planet Pledge は、CMO(最高マーケティング責任者)向けの 4 つのコミットメントから構成されます。
出典: WFA 公式発表ページ(🟢 一次確認済)
"WFA launches Planet Pledge for Marketers", 2021-04-21
第 1 コミットメントの "marketing supply chain" は、私たちが本シリーズ序章でお話しした「マーケ取引先」と、ほぼ同義です。
具体的には:
これらの「マーケ取引先」全体に、CMO は脱炭素を働きかけることをコミットしている、というのが Planet Pledge の構造です。
ローンチ時点で参加を表明した企業の一部:
参加した国別広告主協会(22 か国・🟢 一次確認済):
日本(広告主協会 = JAA、日本アドバタイザーズ協会)の参加状況については、本記事執筆時点で確認できていません。今後の動向を観察する価値がある領域です。
Ad Net Zero は、UK 発・グローバル展開の業界イニシアティブです。広告産業全体で 2030 年までに net zero を目指すことを目標としています。
特筆すべきは Point 3 の「Reduce emissions from media planning and buying」です。これは、広告キャンペーンの 企画・配信プロセス自体 の CO2 を削減せよ、という要請であり、プログラマティック広告の CO2 計測 SaaS(前回記事 ② で触れた Scope3 など)の市場ニーズに直結しています。
「2030 年 net zero 達成目標」「世界広告費 49% カバー」といった補足数値は、過去の WebSearch summary 経由で確認していますが、本記事執筆時点で公式ページから直接の出典確認は取れず、🟡 扱いとしています。
国内の動向で、本記事執筆時点で最も具体的な数値を示している調査が、株式会社メンバーズの 「BtoB グリーンマーティング実態調査 2026」(2026 年 4 月 22 日発表・🟢 一次確認済)です。
注: 発表ページに「マーティング」という誤字が残っていますが、正式調査名のため本記事でもそのまま表記しています。
数値を引用する前に、本調査の 前提条件 を明示します。これは、数字を読み解く側に必要な情報です。
この数字を「日本の B2B 全体で 96.2%」と読むと 不正確 です。本調査は 製造業・建設業に限定、しかも n=53 の小規模調査 です。
それでもなお、注目に値する数字だと弊社が考える理由は 2 つあります。
これらは「調達側」の動きです。マーケティング・営業の取引先選定基準にサステナ観点が降りてくる までには、もう少し時間がかかると思われます。ただし、その方向への流れは、欧州 + Tier 1 サプライヤー経由で日本に降りてきている、と弊社は見ています(⚪)。
簡単に、押さえておくべき動向を列挙します。
ここまで、欧州規制・WFA Planet Pledge・Ad Net Zero・日本 B2B の動向を整理してきました。
これらの流れがマーケ領域の取引先選定にも波及していく と弊社は見ていますが、この見立てはあくまで弊社見解(⚪)です。WFA Planet Pledge の第 1 コミットメントは「marketing supply chain」を明示的に対象に含めているものの、それが日本市場で B2B マーケ取引先選定に降りてくる時期・形は、確定的に予測できる段階ではありません。
ただし、
これらを並べて見ると、リードナーチャリング運用に投資する判断は、業績観点だけでなく、3〜5 年スパンでの "マーケ取引先選定" の文脈でも筋がよい と、私たちは考えています。
「サステナビリティ」は、マーケティング部門にとって従来は「ブランディング」「広報」のテーマでしたが、規制 + 取引先選定の両面から、マーケ施策の選択そのもの に影響する文脈が立ち上がりつつあります。リードナーチャリング運用支援会社として、私たちはこの流れを誠実に Fact で整理してお伝えする責任があると考え、本記事を書きました。
次回 ④ 最終回では、マーケティングアカデミアが取っている 「リードナーチャリング運用専業」 というポジションと、専任の運用担当者 + Kizuna エンジンの仕組みについて、隠さずお話しします。
マーケティングアカデミアは、リードナーチャリング運用を専業とする支援会社です。専任の運用担当者 が、貴社のハウスリードを温め直し、商談化(トスアップ)するサービスを提供しています。
[ecgt]: Directive (EU) 2024/825 of the European Parliament and of the Council on Empowering Consumers for the Green Transition. 国内法制化期限 2026 年 3 月 27 日、施行日 2026 年 9 月 27 日。Carbon Trust 公式解説 https://www.carbontrust.com/news-and-insights/insights/ecgt-directive-explained-what-organisations-who-sell-in-europe-should-know-and-do。European Commission Green Claims ページ https://environment.ec.europa.eu/topics/circular-economy-topics/green-claims_en。検証ステータス: 🟢 公式解説で確認。
[wfa]: World Federation of Advertisers, "WFA launches Planet Pledge for Marketers", 2021 年 4 月 21 日発表。https://wfanet.org/knowledge/item/2021/04/21/WFA-launches-Planet-Pledge-for-Marketers。22 か国の国別広告主協会参加 https://wfanet.org/knowledge/item/2021/09/09/Four-major-multinationals-and-22-national-advertiser-associations-rally-behind-WFAs-Planet-Pledge。検証ステータス: 🟢 一次確認済。
[adnetzero]: Ad Net Zero. https://adnetzero.com/. 5-Point Action Plan 原文確認、グローバル展開(US, Europe, Australia, New Zealand)確認、280+ supporters worldwide。「2030 年 net zero 達成目標」「世界広告費 49% カバー」は WebSearch summary 経由(一次未確認)。検証ステータス: 🟢 公式ページ部分確認、一部 🟡。
[members]: 株式会社メンバーズ 脱炭素 DX カンパニー「BtoB グリーンマーティング実態調査 2026」、2026 年 4 月 22 日発表、対象 BtoB 製造業・建設業の環境配慮型製品の販促・マーケ開発・営業企画担当者 53 名、調査時期 2026 年 2 月 28 日〜3 月 5 日、Web アンケート方式。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000145282.html および https://www.members.co.jp/download/172-greenmarketing-survey。検証ステータス: 🟢 一次確認済。
[scope3]: Scope3. https://scope3.com/. プログラマティック広告 CO2 計測 SaaS。検証ステータス: 🔴 数値の一次出典未追跡。
[statista]: Statista, "Sustainability in advertising and marketing in Europe - statistics & facts". https://www.statista.com/topics/12484/sustainability-in-advertising-and-marketing-in-europe/。検証ステータス: 🟡 詳細メソドロジ未確認。
[cleancreatives]: Clean Creatives. https://cleancreatives.org/. 広告・PR エージェンシーに化石燃料企業との取引拒否を求める運動。検証ステータス: 🟡。
[thesustainable]: The Sustainable Agency, "Best Sustainability Marketing Agencies | 2026 Guide". https://thesustainableagency.com/blog/best-sustainability-marketing-agencies/. 検証ステータス: 🟡 業界ブログ。